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2014年に発売された音楽で良かったものベスト10 (弾き語り中心)

2013年12月の音楽振り返り記事で、「来年のこのようなリストはきっとCDではないと、これはほぼ確信」といっておきながら、まだCDも聴いている1年でした。ただ、インターネット上で出会う音楽もそうとう多くなったことも事実。ある日タガが外れたら一気にドカーっと風景が変わる予感はあるなあ。さて、2014年に遭遇した刺激的な音像は以下のような次第。

 

■1 西森千明 / かけがえのない

かけがえのない

かけがえのない

 

 ニック・ドレイクの母モリー・ドレイクによる公開する予定の無かった自宅録音、または山田耕作自身のピアノのみをバックに藤原義江が歌う「からたちの花」を想い出した。物理的というより心理的にかなり遠くのほうから呼ぶ声。ただの郷愁ではなく、ちょっとした恐さも感じる。小津安二郎監督作品で表現されているなんでもない日常の、なんでもないから醸し出される恐さ、というか。

 

2 Louis Baker / LOUIS BAKER

 うわわ、これは弾き語り界のジェイムス・ブレイクか。2014年の3月にデビューEPを出したばかりの、ニュージーランド出身のシンガー・ソングライター。風貌はアメリカのTVドラマシリーズ(『サウスランド』とかの警官モノ)に出てきそうなのに、語り口は極めてソフト、で、アシッド過ぎず熱くならなければならないところは熱く。

 

3 プリシラ・アーン / あなたのことが大すき。「思い出のマーニー」歌集アルバム

 「Fine On The Outside」を聴くと自然に『思い出のマーニー』のあれやこれやの名場面を思い出せるという、パブロフの犬状態な私。アーン氏曰く、曲自体は実は映画のできる9年も前に書いていて、「中高生の頃、実は私はいろいろと寂しい思いをしたことがあって。小さな街からロサンゼルスに1人で出て行って自立するときに、孤独や寂しさを乗り越えられる自分になりたいというのと、そういうものも含めた自分を受け入れたいなっていう思い」で作ったという(*1)。まさに映画の主人公、杏奈のよう。で、作曲者本人はジブリ映画大好きで、主題歌オファーは夢のようだったという。それを置いておいても、他の歌も全部いいなあ。朗らかなジョーン・バエズ又はたった一人のイノセンス・ミッション。

参照

*1 プリシラ・アーン×村松崇継「思い出のマーニー」対談 (1/3) - 音楽ナタリー

 

4 渡辺勝 / ミナトの渡辺勝ショウ

ミナトの渡辺勝ショウ

ミナトの渡辺勝ショウ

 

 シャンソニエと琵琶法師が混ざったような、土着と風狂共存したような、不思議に惹きつける歌がつづく。収録曲最後の「僕の倖せ」に泣く。40年目のアクロス・ザ・ユニバース。「本当に好きになりたくて 僕の為じゃなく」に、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」にあった、「ほんとうにみんなの幸のためならば僕のからだなんか百ぺん灼いてもかまわない」を思いだして、また泣く。ガット弦をバチバチとひっ叩く弦の響きが心根を刺す。

 

■5 松田美緒 / クレオール・ニッポン──うたの記憶を旅する

クレオール・ニッポン──うたの記憶を旅する[CDブック]

クレオール・ニッポン──うたの記憶を旅する[CDブック]

 

 世界中を巡ってたどりついた日本。メルセデス・ソーサやリリアナ・エレーロのような世界観。ウィキペディア日本語版の「クレオール化」によれば、「マルチニック生まれの詩人・作家・思想家のエドゥアール・グリッサンの打ち出したコンセプトであり、言語、文化などの様々な人間社会的な要素の混交現象」だという。どこのどんな文化でも「クレオール」な部分、多極で多彩で多様な部分を持ち合わせてるとは思うけれど、それをくっきりと浮かび上がらせてすっきりとまとめる技は誰にでもできるもんじゃない。小沢昭一鈴木亜紀、笹久保伸等、旅をしながら歌を探して歌い継ぐ歌手の系譜につながる。

 

■6 笹久保伸 / 秩父遥拝 

秩父遥拝

秩父遥拝

 

 クラシック・ギターからはじまって、南米はペルーの音楽修練を経由して、地元・埼玉県秩父市に埋もれていた仕事歌の発掘へ。50年代末からの米フォーク・リバイバルは形と場所を変えて連綿と続く。先人たちの一部がそうだったように、義務感にかられて、もしくは仕事としてやっているんじゃなくて、飽くまで音楽が面白いから調査する。ブラジルのトロピカリズモ、キューバのヌエバ・トローバ等々も連想。

 

■7  タクシー・サウダージ / JA-BOSSA 

JA-BOSSA

JA-BOSSA

 

 激渋な低音声による創作ボッサによろよろ。60歳の秩父タクシー運転手という経歴にほろほろ。笹久保伸と久保田麻琴両氏のバックアップでへろへろ。日本語詞のついたボッサとしてもかなり画期的な位置にいるんじゃないかと思う名曲、「アベマリーア!」は眠らない初夏から晩夏の真夜中によく聴いた。

 

■7 Richard Thompson / アクースティック・クラシックス 

Acoustic Classics

Acoustic Classics

 

 2014年9月23日テレグラフ誌の日曜版に「Richard Thompson: 15 great songs」という特集があって、そこに選ばれていた曲(「Dimming Of The Day」や「Beeswing 」等々)もしっかりと収録されている。それらの素晴らしさも言わずもがななんだけども、夫婦時代の名作『Richard and Linda Thompson』からの「Walking On A Wire」を離婚したのも関係ないかのように朗々と歌っているのに職人ぶりを感じた。というか別のワイフがいるからか。シャキシャキとしたギターに燻したような深い声。職人の中の職人。

 

■9 池間由布子 / しゅあろあろ

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しゅあろあろ』、なんだか人を喰ったような、古くから伝わる呪文でもあるような、SF(すこしふしぎ)なタイトルだけれど、中身は直球。特に1曲目の「拝啓、朝。」には「わっ、ちょっといい曲できちゃったんだけど!」的な喜びに溢れている。PVもSF。アルバム完成直後はどこの流通も介さず、個人店や服飾店、自身のライブのみでの販売だけ、のようだったけど今日現在はアマゾンでも扱っているみたいだ。

 

10 豊田道倫 / SING A SONG 2

SING A SONG 2

SING A SONG 2

 

 2004年に発表された2枚組みの全曲弾き語り作品『SING A SONG』。冒頭に収録されていた松山千春ばりの名曲「雨のラブホテル」だけでも胸焼けしていたのに…3枚組みとは途轍もない。まだ全曲聴けていないし。もしかしたら歌詞を見るだけにしておく方がいいかも知れないしな、などと言い訳を重ねる。例えば「mtb」。「渋谷の駅前 携帯の充電 有線放送 この曲ができたとき 君はまだ生まれていなかった 生まれてきてなかったけど 君はどっかにいたような気がする」。言葉の端々が格好いい。