「あんたなんでまだ音楽やってんの?」と問われたのなら

今日は「あんたなんでまだ音楽やってんの?」という匂いたつような無益な殺生にも似た問いかけに関して少しばかり。

 

私が曲を作りはじめたのは中学生の時で、当時はなにか出来るたびに友人の家に電話して「ちょっといいのできたんだけど!」と歌うという、神をも恐れぬ所業を繰り返していた。そこから20年ばかり、まだやってます。「またやってる」じゃなくて「まだやってる」と言ったのはみうらじゅん氏だったか。

 

で、「あんたなんでまだ音楽やってんの?」といわれると…、「業」みたいなもんですこれは。やらなくても誰も困らないし、生活が成り立つほど稼げる、わけではもちろん全然ない。歯磨きのあとにフロスをやらないとなんか気持ち悪いよなーやっとくかー、というような習慣かもしれない。

 

あとは… この文章を書くにあたって沈思黙考。はたと思いついたのは、「年に2回くらい曲がどんどん生まれる時期」が訪れることがあって、それはかなり楽しいかもな、というもの。その時期を迎えるときは大抵、刺激的な音楽や文章がきっかけとなることが多い。影響を受けた音楽というやつだ。

 

例えば高校時代はエイフェックス・ツイン。あ、テクノの人です、便宜的には。あまりにもラーメン屋のアルバイトが嫌で、気合を入れるために彼の「Girl/Boy Song」という曲を聴いてから向かう。実家の勉強部屋を閉め切って、ボリュームを最大にしてという。見事なまでの欝的症状だった。

 

 

20代前半の「阿佐ヶ谷一人暮らし」時代はジョアン・ジルベルト。お金が全くなくてどこへも行けなかった+暇な時間がやたらあった+聴くCDはそれしかなかった、という極めて建設的な理由で『3月の水』を1日10時間くらいリピート。焼肉屋の匂いが立ち込めてくる4畳半で、寝そべって『3月の水』を半永久的に流していた。ジョアンをこんなに4畳半に近づけた男は他にいない、と自負しております。ちなみに誕生日は私と同じ日。

 

 

あれ…曲が生まれる瞬間を書こうと思ったら修行僧みたいな内容になってきたのでここでやめとこう。「全然やってる音楽と関係ないじゃん!」と突っ込まれそうですが、影響というものはそういうもんです、多分。刺激を受けてしばらくするとポンとでてくるのが、脳の仕組み的にも面白い。


そんなこんなで云々していたら20年ばかり経っていたという次第で。今回の第1作品集『風邪をひかない』では6,7年くらい前から最近までに作ったのものから少しずつ、入れてます。下で紹介する「同じ風景」という歌は比較的新しくて、2014年のはじめぐらい。どうぞ聴いてみて下さい。