よあけ

今日は『風邪をひかない』の7曲目に収録されている、「よあけ」という歌の話を。

ユリー・シュルヴィッツというワルシャワ出身の絵本作家の作品に、『よあけ』というのがあって。これがまた沁みる話なんだ…。日本中けっこうな数の図書館で貸し出しされているので(たぶん)、おすすめであります。

話の筋は簡単。一言でいうと「湖のほとりで野宿した老人と少年が朝をむかえる」。それだけ。なんだけど、その流れを表現する選び抜かれた言葉と絵の力に痺れる。

で、「よあけ」という歌はそのままそこで描かれている世界を勝手に拝借したもの。図書館で絵本のみを片っ端から読み続けていた時期に、シュルヴィッツ氏の『よあけ』に遭遇したのだった。

シンプルな絵本の中でも圧倒的にシンプルな内容。刺激的だった。リッチー・ホウティンミニマル・テクノのような、ジョン・レノンの『ジョンの魂』のような、武部利男翻訳による白楽天の詩、のような平易さ。でも大人用でしょちょっとこれは…と思いつつ。

で、この絵本、だれか短編映画にしてくれないかなー、で、なったら主題歌はこんな感じでしょ、という大物プロデューサー視点の、何なんだお前は、のような感じで(作るときだけですが)作ったような気がいたします…。下の画像は表紙。字体もいいな…。

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歌をつくるいいきっかけの一つに他人様の創造物がある。中でも、シンプルを極めたようなものに憧れる。焦がれて、その勢いでこちらの脳みそが糸こんにゃくが成型されるかの如く、ぐにゃっ押し出されて、気がつくとなにか出来ている。というのがいいきっかけ。『よあけ』もそうなんですが。

それと同じにロシアのアニメーション作家、ユーリ・ノルシュテインによる『きりのなかのはりねずみ』(あ、これも曲作ったのだった)だったり、ベルギー出身のガブリエル・バンサンによる『アンジュール―ある犬の物語』なんかがあって。

それらの、というか絵本という形式だいたいの、シンプルな風体にいつも驚き、ため息をついて、ひれ伏して、ぐにゃっと刺激が押し出される。「よあけ」もそんな感じで出来た歌です。どうぞ聴いてみてください。

 

よあけ (世界傑作絵本シリーズ―アメリカの絵本)

よあけ (世界傑作絵本シリーズ―アメリカの絵本)

 

 

きりのなかのはりねずみ (世界傑作絵本シリーズ)

きりのなかのはりねずみ (世界傑作絵本シリーズ)

 

 

アンジュール―ある犬の物語

アンジュール―ある犬の物語