Apple Musicで本気で踊れるプレイリストを作ってみました。ネタ元の紹介付き

巷で蠢いている音楽ストリーミングサービスすなるものにすっかりはまってしまいました。で、Apple Musicで本気で踊れるプレイリストを作ってみましたので、もしApple Musicを使うことができる環境にいる方はぜひぜひ。

(あ、Apple Musicいまは無料期間ですが、期間が終わったら後腐れなくすっぱりやめるのには設定しておくと便利です。私は続ける可能性濃厚ですが…)

 

Apple Musicプレイリスト

小粋に小躍り

 

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自分で作っている歌はそんなに明るくないので、ここはもう一つハッピーではちきれんばかりの選曲をしてやろうじゃないか、と意気込んでみました。根っこにある思想はアメリカの伝説的なDJ、ウルフマン・ジャックのこんなお言葉。


ここでは選んだ曲に一言ずつの注釈と、曲が収録されているアルバム(一部シングル盤)を載せます。よかったら深堀してみてください~。 

1. Mel Torme - Route 66 (Live)

泣く子も笑うジャズ・ボーカル御三家の一人、メル・トーメ。こんな凶暴な「Route 66」(ナット・キング・コール版がかなり有名)があったなんて!とびっくりした音源でした。本プレイリストを作ろうと思い立ったきっかけ。パンク・ミュージックみたいな狂犬スキャットと難し過ぎるコール&レスポンスも聴き所。痺れるのは他の曲の節を引用しているところ。1:33-38の「セインツ・ゴー・マーチン・イン」(ルイ・アームストロングで有名)と、2:44-47の「ソルト・ピーナッツ」(ディジー・ガレスピーで有名)。一人口DJ。 

 2. Pointer Sisters - Salt Peanuts

「ソルト・ピーナッツ」つながりでこれを。4姉妹の凶暴ぶりもさることながら、ウッドベース、ピアノ、ドラム、と皆さん他の人のこと全然考えずにやりたいように5分間ずっとはっちゃけてます。ごついです。

That's A Plenty

That's A Plenty

 

 3. Harry Belafonte - Man Smart (Woman Smarter)

野茂英雄のテーマ HIDE~O』の元ネタであるところの「バナナ・ボート・ソング」で有名な、みんな大好きハリー・ベラフォンテ。あれはノベルティ・ソングであってだな本当のお姿は…ということも無い。太陽の届かない惑星でもこの方がいれば暑くなる、20世紀を代表するエンターティナー。

Calypso/Belafonte Sings of the

Calypso/Belafonte Sings of the

 

 4. Bobby Troup - Take Me out to the Ball Game

Bobby Troup氏の作になる「Route 66」は、圧倒的にナット・キング・コール版が名を馳せてしまったのですが。小粋な歌いっぷりはむしろボビーさんの方が上かも。

Bobby Troup and His Stars of Jazz (Mono Version)

Bobby Troup and His Stars of Jazz (Mono Version)

 

 5. Tony Bennett & Count Basie and his Orchestra - Ol' Man River

 永久にクールな僕たちの伯父さん、トニー・ベネット。最近もレディ・ガガとデュエットアルバム出されてましたけど、この頃も凄いっす。出だしから中間部分あたりまでのボンゴ・プレイも圧巻。ボンゴ担当していたCandido Camero氏、94才でまだ現役だという!

In Person (Original Album Plus Bonus Tracks 1959)

In Person (Original Album Plus Bonus Tracks 1959)

 

 6. Vince Guaraldi Trio - Fascinating Rhythm 

ここいらでちょっとだけ一休み。5で紹介したアルバム『In Person』にも収録されていた、「Fascinating Rhythm」のインスト版。1920年代(!)にガーシュイン兄弟がミュージカル『Lady, Be Good』(主演はフレッド・アステア!) のためにつくった曲から。フルでやるとこれまたけったいな調子のプログレ曲なのですが、カバーする方々はいいとこどりをすることが多いですね。で、これまた人を喰ったようなギターアレンジが素敵すぎる。ヴィンス・ガラルディさんはスヌーピー・ジャズの人。 

Vince Guaraldi Trio (Remastered)

Vince Guaraldi Trio (Remastered)

 

 7. Nat King Cole - Lover Come Back to Me! 

演奏を務めるビリー・メイ楽団のアレンジが格好良すぎて吐きそうになる。1952,3年頃の録音らしい。モナリザなんて聴いている場合じゃないよ! 

Songs by Nat King Cole (Mono Version)

Songs by Nat King Cole (Mono Version)

 

 8.Tamba Trio - So Danco Samba

ブラジルの粋人ピアニスト、ルイス・エサ氏が1962年に結成したトリオ。アルゼンチンのアカセカ・トリオを聴くといつも彼らを思い出す…。三人組、といっても構成は全然違うけれどアレンジの変態ぶり(褒めてます)には共通するものがある気が…。 

Tamba Trio

Tamba Trio

 

9. Frank Sinatra - Ring-A-Ding-Ding

楽しくて、ノリがよくて、で歌詞をみるとなんだか泣けてくる。ポップソングの全てを体現しているシナトラ御大の油の乗り切った壮年時代。歌詞がとにかくいいんだ。

人生は無価値なもの、
あるのは大いなる退屈だけ。
所が突然君は頭を叩いてみて、
ふらついている自分を確かめてみるんだ。
彼女のため息で君が感じるのは、
まるで紐につながれたおもちゃのようだって。
それで君の心臓は:
ドキドキと、
ドキドキと、
ドキドキと鳴るのさ。

引用元:

Ring-A-Ding-Ding 日本語訳

Ring: A: Ding Ding! + I Remember Tommy (Remastered)

Ring: A: Ding Ding! + I Remember Tommy (Remastered)

 

10.Buddy Rich - The Beat Goes On

酔っ払った12歳の実の娘に歌わすBeat Goes On。舌足らずな歌唱と一寸乱れぬブラス隊の絡まりが凄いのです。娘さんのCathy Richは今も歌っていて、すっかり姉御肌。

Big Swing Face

Big Swing Face

 

 

 

思い出のマーニーの思い出のマーニーの思い出の…

思い出のマーニー [Blu-ray]』を観た直後の私のつぶやきの興奮ぶりは「見られたくない卒業アルバムの写真」状態になっていて、かなり恥ずかしい。

 

ちょっと(いや相当)勢いこんでいるけれど、いまもざっくりとした印象の方向は変わらない。どしーんと落涙のストライクゾーンに入り込んできた(広いです)、いい作品だった。プロット、演出、そのほか云々に関しては割愛することにして、マーニーを振り返って浮かんだことを、ひとつふたつ。

 

ひとつめ。『マーニー』の最後の決定的なネタばれ場面で演出されている「世代が続いていることの、当たり前さと不思議さ。」について(映画見ないと分らないはず…分っちゃったら平にご容赦を。平に平に。)。それを見て思い出したのは、こんな文章。

 

ある日パン生地をこねているとき、ふと思った。いつから人類はこんなことをやっているのかしら。こんなことを考えるうち、過去には、パンをこねて焼いてきた女たちの、滔々たる系譜があり、今その末尾に私もつらなっていることに気がついた。私という一回性の現象も、その系譜という連続性のなかにあるという発見であった。喜びが沸きあがった瞬間、そのときが私の出発になった。

 

舟田詠子『パンの文化史』講談社文庫版 P3

 

「私は輪の外側の人間。私は私が嫌い。」と近年のマナーらしい(?)鬱屈した不安を抱える主人公、杏奈。輪の内側か外側か。最終的には本人が決めるしかしかない、最後にどうするか。で、そこからぶわああっと転回する最終シーンを見て、あ、『パンの文化史 (講談社学術文庫)』の冒頭じゃんこれ、と思った次第。

 

「世代が続いていることの、当たり前さと不思議さ。」について、この絵のことも思い出した。エルンスト・H・ゴンブリッチ『若い読者のための世界史(上) - 原始から現代まで (中公文庫)』の冒頭の挿絵。 

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著者が25歳のときに、「イルゼという実在の少女(後の妻)に語りかけるような形」で綴られたという世界史の冒頭。途方もないむかしむかしのことを表現するのに使った、鏡合わせの世界。ここでほぼ無限に連なっていく人の姿にあわせて、系譜もずっとつづいているんだよ、と。さしずめ「思い出のマーニーの思い出のマーニーの思い出の…」と杏奈の子孫(ができたとしたら)が語りついでいったら、のごとく。

 

のこりの一つ。マーニーは「ひと夏の体験」系としての系譜としても連なるなあ、、立派な金字塔を打ち立てたなあと…。それも脳内にとっかかりを残す、甘酸っぱく苦い系の。古いのからあげていくと。

 

『思い出のマーニー』はかなりSF入っていたけれど、こちらはサスペンスだった。無敵の映画。

 1997年に発売されたセガ・サターンのゲームソフト。といっても映像はなく、オーディドラマで要所要所の選択肢を選ぶだけ、の激渋なゲームだったけれど、忘れられない。いまwikiで見返していたら音楽は鈴木慶一、エンディングテーマは、矢野顕子「ひとつだけ」と分った、凄い。

リアルサウンド風のリグレット

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  この中では一番新しいアニメ。でも原作は一番古い、1967年。時をこえてる。

時をかける少女 通常版 [DVD]

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あ、あとマーニー主題歌のPV、素晴らしく最小限な作りでおすすめです。作曲者本人が来日したときの滞在先ホテルで撮ったんかこれ、予算ないんだなと思わせながらも。

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「ホーボー・ソング」試聴音源をUP

さてさて、今回で第1作品集『風邪をひかない』に関して書くのは最終回。しばし篭ります。来年くらいにまたこんな感じの紹介をするかも知れないし、もしかしたら来月あたり何食わぬ顔で新曲を携えて出現するかも知れないですが、とりあえずは1段落。最後は「ホーボー・ソング」という曲について。


ホーボー。ふらふらと方々をさまよう人。フーテン(漢字にすると格好いい、瘋癲)、ヒッピー、季節ごとに働く場所を変える労働者、等等、意味合いは様々。「ホーボーというのはね、浮浪者ということです。」とラジオでさらっと説明していたのはピーター・バラカン氏。うむむ、ばっさりいくなあ。


そんなにばっさりとはいけない「ホーボー・ソング」は、意味というよりも「ホーボー」という音から先にできた歌だったような。「ホゥ、ボゥ」とゆっくりと発音したときの、ちょっとひょうきんな感じ。「ホゥ」と口に出したあとに濁音をそっと加える「ボゥ」だけで言葉ができる心地よさ。


それを繰り返しているうちにしっくりとくる和音進行ができてきて、歌のような形がノシっとでてきた。そこから「ホーボー」を題材とした作品を熟読玩味、歌詞もできてきたという次第。「ホーボー」という言葉が憧れやら蔑みやら郷愁やらいろんな感情を持たれやすいからか、そんな作品はいろいろあった。


例えば、ボブ・ディラン(や高田渡)の師匠、ウディ・ガスリーの「ホーボーズ・ララバイ」。それを和訳して郊外型の叙情をくわえた岩井宏の「ホーボーズ・ララバイ」。漫画では永島真一『フーテン』。あ、あと『男はつらいよ』の寅さんも、私の中ではホーボーなんだよなあ。故郷はあるけど、あるがゆえにぶらぶらしちゃう。


故郷を捨てる正統派(?)のホーボーは良寛和尚と、映画『真夜中のカーボーイ』にでてきたラッツォ。あとはジャック・ケルアック『路上』だったりと。そんないろいろのホーボーの系譜の末席に「ホーボー・ソング」が、あるんじゃないか…あればいいなあ…。というわけで、「ホーボー・ソング」。どうぞ聴いてみてください。

 

 

ボッサ・ノーヴァ遥かなり(「こぼれるひとしずく」試聴音源をUP)

今日は作品集『風邪をひかない』の5曲目に収録した「こぼれるひとしずく」について少しばかり。


「こぼれるひとしずく」。雨上がりの晴れ間、葉っぱの葉脈に沿って並んだ水滴が落ちそうで落ちない、落ちそうで、まだ落ちない。落ちそうで、、、あ、、落ちた。。という流れが好きで、それを題名に持ってきたら、曲もおのずとやって来たという。作る者にとっては、あんまり手のかからない優良児だったような気がする。

 

ちなみに「こぼれるひとしずく」の「心根に チューニングを 合わせて」という部分の和音進行、これはそのまんまジョアン・ジルベルト版の「3月の水」。たぶんキーは違うけれど。さらにさらに「真夜中のカーボーイ」のイントロも、「3月の水」の中途の和音進行。


どんだけジョアン好きなんだ私は。もちろん端から分りようが無いのは承知なのですが。。どちらも和音の型だけ拝借してリズムは似つきようもなく、誰からも突っ込まれる事は半永久的にないだろうから、自主的にカミングアウト。


おそらく作曲しているときに「うわ~、こんな和音の動き格好いいなあ」と焦がれた気持ちをそのまま表現したんだと、、そう思われます。いずれにしてもボッサ・ノーヴァからは遥かな距離が。。あんな風に洒脱に、もしくは大人にいきたいもんです。


あと30年くらいは精進が必要な感じですが、いまのところはこれが相応の程度。でもまあ、これはこれでなかなか…、と思ってくれたら嬉しいっす。それでは、どうぞ聴いてみてください。


こぼれるひとしずく